本記事はThe 8 Steps To Creating A Great Storyboardの翻訳記事である。デザインスプリントはGoogleが行う意思決定の速い、高速のデザインワークショップである。

THE GUILDではグループ内でスプリントのノウハウを共有すべく、自主的に翻訳を開始した。本記事は7回にわたる連載の第4回目。


Google VenturesのJake Knappが、チームのアイデアを紙に記述する爆速プロセスを紹介する。

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Google Ventures Design Studioには、5日間にわたるデザインプロセスがある。それはプロトタイプとテストを通じたデザインからプロダクトやサービスを生み出すためのものだ。この手法を我々はプロダクト・デザインスプリントと読んでいる。この記事は自分達でデザインスプリントを行う為の4回目の記事である。

スプリントの最初の2日間では、扱う問題について学び、多くの知識を共有し、スプリント中で克服したい課題を見つけ出した。ここからはソリューションを大量生産する。このステップは2時間〜まる1日ほど費やす予定だ。

私はこのステップを「発散」と呼んでいる。なぜなら(CEOからマネージャまで)全員がクイックスケッチをガンガンと生産し、大量の異なった種類のアイデアを生み出すからだ。ゼルダの伝説を思い出してみよう。迷宮を探索するにつれて、訪れた部屋がマップへ記載されていった様子を思い出そう。2日目にはそういったこと、可能な道筋をすべて照らし出していく。

これからアイデアを生み出していくが、これはブレーンストーミングではない。少なくともブレーンストーミングのように全員がアイデアを叫ぶものではない。逆に、このスプリントでは全員が同じテーブルを囲みながら、黙って個人として作業する。以下に概要をしるしたエクセサイズは、自分のアイデアを紙に無理矢理に描きだすものだ。このやり方は、作業を終わらせねばとか完璧にせねばといった気持ちから解放してくれる。

古いアイデアを引っぱりだせ

私の経験では、スプリントから得られるベストアイデアのいくつかは、スプリント開始前から存在している。悪いアイデアではないが、どこか気に入ってなかったアイデアなどだ。スプリントは全てのソリューションを平等に検討する機会となる。すでに思いついていたアイデアを出さずにおくなど、自分を殴るようなものだ。

新しいアイデアは新鮮でキラキラしているので、進行役は全員に対し、古いアイデアから先に出すように念を押す必要がある。5ヶ月前にシャワーを浴びたり、ブリトーを食べながら思いついたアイデアを恥ずかしがる必要はない。

まず紙で

通常のデザイン業務にある問題点は、企業がいきなりスゴいモックアップを作ろうとする習慣だ。デザインスプリントでは、多くの理由から紙でデザインを開始する。

  • 素早い
  • デザイナーでなくても参加できる
  • 素早くラフなものなので、生み出したアイデアに固執しない。私たちは意図的に太いマーカーを使って、細かく描き込めないようにしている。
  • 素早い(大事なことなのでもう一度)

以下のエクセサイズを行って、ノートとりからはじめてスケッチと共有まで、全員を先導しよう。前々回の投稿で、必要な道具を確認する。私は信頼するこのタイマーを使ってるので、各エクセサイズの残り時間をみんなが把握できる。

私がスプリントを運営する場合、「ストーリーボードを作る(エクセサイズのステップ5)まで誰ともシェアしない。あとで十分にブラッシュアップする時間はあるから」と、全員に念を押すの好みだ。全員がのびのびしていることと、時間制限はあっても余裕があることを確認したい。

Step1. 問題の一部を選ぶ

スプリントの初日、我々はユーザーダイアグラムを作った。チームでダイアグラムを確認しよう。ユーザーストーリーが2ステップ以上ある場合(大抵の場合はそうなる)、スケッチをする前にストーリーを分割する必要がある。これはストーリーの自然な固まりをみつける程度で、その固まりにボックスを描くぐらいのシンプルさでよい。以下のような感じだ。

story

そして最初にどのパートに照準をあわせるか決める。スプリントする全員が問題の同じパートにフォーカスすることは、通常の場合なら理にかなっている。このやり方でいくなら、あなたの進行に従って、全員で問題の各パートごとにスプリントのサイクルを行う。

もちろん「分割して統治しろ」に従ってもよい。全員がストーリーから自分の興味がある断片を取り上げ、それに取り組む。ユーザーストーリーの全体図を考えないというリスクはあるが、この方法は一般的にいって素早い。ストーリーが2〜3個以上に分割できるなら、「分割して統治」するか、あるいは今回のスプリントでは問題の一部だけを扱うかを決めなければならない。

どちらにしろ、進行役は作業を進める前に、ストーリーのどの部分に焦点をあわせるのか全員が知っているよう確実にしておく。

Step2. ノートを取る(5分)

スプリントのこの段階では、ホワイトボードと壁はダイアグラムやメモ、”How might we”のポストイットで被われているだろう。これらの品々を頭に再インプットするチャンスである。全員、紙を使って役に立ちそうなものを書き留めておこう。

Step3. マインドマップを描く(10-15分)

これから、頭の中にある全てのアイデアを追加していく。さっきとったノートとアイデアを混ぜ合わせ、紙の上でざっくりまとめてみよう。マインドマップは、UIをスケッチするときに使える「カンニングペーパー」になる。

マインドマップについて馴染みがなければ、私はよくこう説明している。「特定のフォーマットなしに頭の中の全てを書き出すこと」あるいは「1人で黙々とブレーンストーミング」。単語を書き出して線でつなげたり、絵を描いたり、基本的になにをやってもokだ。重要なのは、全員が古いのも新しいのも全てのソリューションを頭から出して超雑に紙に書き留めることだ。

一例を示す:

mindmap

 

 

Step4. クレイジー8を行う(5分)

全員で、A4ペーパーを8つ折りにして開く。すると8面ができあがる。合計5分で、8つのスケッチを描く。1スケッチ1パネルだ。つまり、スケッチ1つにつき正確には40秒だ。これはイカれているが、アイデアのバリエーションを生産するには素晴らしい方法である。この紙はグループでシェアしないので、上手く描く必要はない。

1スケッチ40秒なので、描き直そうとはせずにただアイデアを紙に落としなければならない。またクレイジー8は、クリエイティブな筋肉をほぐし、以後のスケッチのエクセサイズがよりクリエイティブになる。もしもつっかえたら、1つ前のスケッチをちょっと変えたバリエーションを描こう(この手の模索は役立つし、手を動かし続けていられる)。

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ベストな結果を出すには、クレイジー8を2セット行おう。第2ラウンドでは全員がそれを公表する。今あなたは、アイデアの詰った樽の底を掬おうとしているので、新しいアイデアを出すのはずっと難しくなってる。だけど樽の底にこそ、最も面白いソリューションが埋もれている。

こういうと、私が詭弁を弄していると思うかもしれない。記事の前半で古いアイデア達はベストだと言ったのに、今は新しいアイデアを思いつくように言っている。勘違いしないで欲しいのだが、クレイジー8のシートを古いアイデアで埋めても構わない。だが、新しいアイデアも同じくらいよいのだ。なぜなら、古いアイデアが強力であって、古いアイデアがいつも勝つとは限らないのだから。

プロのマメ知識: iPhoneにBit Timerアプリを入れて、30秒作業して10秒休憩する8セットを入力しよう。こうすれば何度も時間を計らなくてもよい。休憩のアラームは、作業中のスケッチ終了10秒前のアラートとして役に立つ。(クレイジー8は、Brynn Evansの685というエクセサイズをベースにしている)。

Step5. ストーリーボードを描く(10-20分)

次に、我々はユーザーダイアグラムをより具体的にしていく。そして匿名で共有し、グループで品評するもの作っていく。このステップのゴールは、生み出したアイデアを発展させ、ユーザーがストーリー内でどのように動くか見える実際のUIをスケッチする。どこがクリックでき、どのような情報を入力し、何をかんがえるか・・・といったものだ。

白紙からスタートし、ポストイットを紙に張っていく。各ポストイットはストーリーボードの1コマとなる。これは漫画のコマを埋める感じだ。マインドマップとクレイジー8の紙を見直し、ベストのアイデアを探す。

各コマを詳細に描きたくてたまならないかもしれない。いまこそ、その時だ。全員に3コマのストーリーボードで、「まずこう、次にこうなって、さらにこうなる」と3段階のUIを描くよう指示する。

storyboard

ストーリーボードには3つの重要なルールがある:

一目瞭然であること

実際の製品とおなじように、あなたのイラストは、プレゼンなしで一目瞭然でなけれなばらない。次のステップでは全員がイラストを見るが、最後までアイデアをプレゼンするコーナーはない。

匿名で行うこと

イラストには自分の名前は書かない。全てのアイデアを同じ土俵に置きたいなら、どのイラストがCEO作かなんて邪魔になるだけだ。

タイトルを書く

アイデアにはキャッチーなタイトルをつけよう。こうするとあとで議論したり、比較しやすくなる。

ストーリーボードが完成したら、粘着テープなどで壁に貼ろう。プロのマメ知識:(美術館みたいに)横並べにすると、みんながストーリーボードを見る時に混み合わなくて済む。

Step6. 沈黙の品評会(5-10分)

次にドットステッカーを全員に配布する。何も喋らずに、全員で異なるストーリーボードを見てまわり、気に入ったアイデアや気に入ったアイデアの一部にステッカーを張っていく。使ってよいステッカーの数に制限はないし、恥ずかしげもなく自分の出したアイデアに投票してもかまわない。最終的にヒートマップ的なものができあがり、いくつかのアイデアは際立ちだす。

Step7. 3分プレゼン(アイデア1つ毎に3分)

次に、ストーリーボードのまわりに集合しよう1つづつ順番にみていこう。まず、みんなで何が気に入ったかを話し合う。それから、なにか見落としている重要な点はないかとそれから絵を描いた人に尋ねる。ふつうもっとも優れた、もっとも人気のあるアイデアは説明なしにパッとわかるものになる。なので、ストーリーボードの作者が、補足することは何もない場合も多い。このやり方は、(ほぼ確実に時間のかかる)アイデアを最初にプレゼンする方法よりも圧倒的に機能する。

critique

特にアイデアの数が多かった場合、このステップでプロジェクターを用いるのが好みだ。各ストーリーボードの写真をスマホで撮り、Dropboxにアップロードし、Kyenoteに貼付ける。それからプロジェクターで見ながら、気に入った部分についてのノートを、アウトラインやテキストラベルでつけていく。このやり方は全員で見やすく、後々のためにデジタルのメモが手に入る。プロジェクターの欠点は、撮影とアップロードに余計な時間が15分ほどかかることだ。

Step8. スーパー投票(5分)

全てのアイデアを確認しおえたら、全員に1-2個の「スペシャル」ステッカーを配布する。これは前に使ったステッカーと同じ製品に、ペンでマークをつけたものでよい。(訳注:実際には色か大きさ違いのドットステッカーを2種類用意しておくとよい)。これらは一番ベストなアイデアのための「スーパー投票」用だ。オリジナルのヒートマップと、これらのスーパー投票で、どれが一番強いコンセプトか一目瞭然となる。

この「スーパー投票」は、チームや企業のデシジョンメイキングプロセスを、ユニークな形でねじ曲げる。CEOがプロダクトの最終決定をする?そういう場合には、正直にCEOにスーパー投票を3票、その他のメンバーに1票渡そう。CEOでなければあるいはUXディレクターか、ショッツとよばれるプロダクトとデザインのディレクターコンビに。シンプルなルールとして、意思決定者には追加の票を与えることだ。

基本的に、このプロセスは実力主義だが、企業が必ずしもそういうやり方をするわけではない。そして率直にいって合意は駄目なデザイン決定となる。ボスがそれほど支持していない選択をするのは、本当に避けたいことだろう。そういうのはチームによっては不文律になっているので、この話を持ち出して気まずい気分になっても、驚かないで欲しい。長いタームでみれば、このやり方でよかったと思うはずだ。

繰り返す

さぁ、ステップ1に戻ってサイクルをもう一度やりなおそう。(大丈夫。繰り返す度に、簡単になっていく)。もし1週目でユーザーストーリーを分割していたら、ストーリーの別の部分を行ってもよい。私がスプリントをやるときには、多くの場合、この時点でスコープが大きすぎると気づいたりする。そして倍プッシュして、同じセクションで作業し続ける。どちらにしろ、次に何にフォーカスすべきか数分考えるには、サイクルの終わりはよいタイミングである。

1日中燃え尽きるまでチームでサイクルを繰り返して欲しい。部隊を動かし続けるために、十分な休憩とお菓子を用意しよう。

次のエピソードをお楽しみに。どうやってストーリーボードを選択し、プロトタイプに進むかを議論する。

関連エントリ

1. How To Conduct Your Own Google Ventures Design SprintTHE GUILDによる日本語訳
2. From Google Ventures, The 6 Ingredients You Need To Run A Design SprintTHE GUILD による日本語訳
3. The First Step In A Design Challenge: Build Team Understanding