本記事は、The product design sprint: understand (day 1)の翻訳記事である。デザインスプリントはGoogleが行う意思決定の速い、高速のデザインワークショップである。

THE GUILDではグループ内でスプリントのノウハウを共有すべく、自主的に翻訳を開始した。本記事は7回にわたる連載の第3回目。


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いつスプリントのチームを編成すべきか、そしてどう準備すべきかは明らかになった。スプリントの初日、「理解」に挑む時間だ。

おそらく、スプリントに参加する誰もが違う視点を持っており、また役に立つかもしれない様々な情報を持っているだろう。初日のゴールは、すでに知っていることをシェアし、グループ全体で共通認識を持つよう押し進めることだ。(メンバーに幾人かが問題について詳しくしっていたとしても)一番最初から始めることにより、グループ全体を初心者のマインドセットに誘導し、新鮮なソリューションを導き出すことだ。(これは、外部の進行役が役に立つ場面だ。彼らは問題にたいして完全に素人であり、彼らの疑問はグループを初心者のマインドセットに引き寄せることができる)。

理解を形作るために、以下のエクセサイズをしよう

我々はテーマについて大量の情報を得て素早く理解するため、下記のようなエクセサイズを行う。これらは好きな順に行ってよいし、意味がないと思ったら省略してもよい。それぞれのプレゼンや議論は最大10分に収めるようにしてみよう。時間制限により1日の作業を停滞させず、皆の集中を持続させることができる。

エクセサイズでは、全員でポストイットに質問をメモしていく。我々は「どうやって◯◯を解決するか?」(How Might We)方式で、探求したいと思える機会を見逃さないようにする。例えば「どうやって信頼を作り出すか?」や「どうやってユーザーの流儀を理解するか?」のように。通常、これらの疑問は、次のステップで非常に役立つことになる。

エクササイズ1 – ビジネスチャンス
CEOやプロダクトリーダーは、ビジネスチャンスや市場などのテーマでスプリントチームを動かしてみよう。

エクササイズ2 – ライトニングな実演
競合のプロダクトを見てみよう。異なったマーケットで似通った問題を解決している、競合でないプロダクトを観察することも役立つ。

エクササイズ3 – 並べてみる
自分達のプロダクトの重要な画面を全てプリントし、並べ、ユーザーになったつもりで歩き回ってみよう。

エクササイズ4 – 成功の指標
「このデザインの成功基準はどうなるだろう?」─ このステップは、成功の指標について話す良いタイミングである。私たちはKerry RoddenのHEART frameworkを好んで用いる。

エクササイズ5 – 既存研究
自分のプロダクトに関するユーザーリサーチが既にあるならば最高だ。もう一回復習しよう。そうでなければ、顧客について知っているどんなデータについてでも議論しよう。

エクササイズ6 – チームインタビュー
問題に関する知識は、たいてい会社中に分散している。我々は、エンジニア、営業カスタマーサービス─分野がなんであれ、社内の特定の専門家達にインタビューしてまわることがとても役立つと気づいた(カスタマーサービスの人々はたいていの場合、問題についてもの凄く貴重な情報を持っている)。

エクササイズ7 – 分析
機能の使われ方、サイトの何処から離脱しているのか、コンバージョン率など、どんなデータでも見てみよう。

圧倒された思い? スプリントの前にデータを集めよう

十分なデータを持っていないのでエクセサイズは辛い、この記事を読んでそう感じても気にする事はない。単にスプリントをやる前に新鮮なデータを素早く集めるために何かすべきという話にすぎない。

単純に、少数によるユーザーテストをしてもいいし、スプリントで取り組む問題についての短期調査でもよい。前もってチームインタビューをするのでもよい。このやり方は沢山の人々の話をきかなければならないときに特に効果的だ。

最も重要なユーザーストーリーをスケッチする

このスプリントで重要となるユーザーストーリーを共同でまとめるために、グループとしての共通認識を用いよう。進行役(あるいは他のボランティア)はホワイトボードの前に立ち、フローをスケッチするべきである。これはわざわざ凝ったものでなくても役立つ。こんな感じで:

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どのユーザーストーリーがもっとも重要か、どうすればわかるだろうか。重要なストーリーはスプリントで取り組む問題による。例えば、

人々にプロダクトを理解する助けをし、使用を開始させるには…
プロダクトに初めて出会ったユーザーのエクスペリエンスに焦点をあわせるべきだろう。

新しいコンセプトを作成するには…
将来を見据えて、のめりこんだユーザー(Engaged User)にとってのバリュープロポジション(訳註:顧客に提供できる価値の組み合わせ)とコア機能を想像すべきだろう。

ランディングページのコンバージョン率を改善するには…
なぜ人々がページを訪れるのか、そして彼らのゴールは何かを理解すべきだろう。

このステップは難しく時間がかかるかもしれないが、必要不可欠である!(上で示したような)ビジュアルマップを作ることは、地に脚のついた議論を行い、全員を同じ土俵にのせるのにとても価値がある。

そして集中の時間

迅速にユーザースタディに取り組まなければならないし、発見したもの全てのプロトタイピングはできない可能性が高い。そこで、どのアイデアを押し進めるか選ぶ必要がある。ホワイトボード上のストーリー図を用い、この議論を組み立てよう。

スプリントの終わり、つまりユーザーにプロトタイプを見せる時点では、何を学びたいだろうか?それを学ぶためには、どのようなデザインとプロトタイプが必要だろう?ここでの決定が、スプリント後半の道筋を決定する。

進行役は、これらの議論を素早く進行する責任がある(タイマーを忘れないこと)。また、一見わかりきったように思えることでも質問することが大事である。何故なら、通常それらの答えは全員の理解を促進するからである。

これで問題の共通認識を具体化し、このスプリントにて挑む部分を定義し始めることができた。さて、次のステップに進むタイミングだ。次のステップは、迅速に、できる限り多くの解決策を展開することだ。

これについては次章で扱う。乞うご期待!

 
翻訳: 深津貴之、岩谷明